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最高裁判所第二小法廷 昭和37年(オ)249号 判決 1965年3月05日

上告人 松方幸輔

被上告人 国

訴訟代理人 河津圭一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人阿比留兼吉、同和久井宗次の上告理由(一)ないし(四)について

所論は、昭和三二年法律第一二四号技術士法三九条は、同年八月一〇日から施行され、その施行前の昭和二四年八月以降平穏、公然に技術士としての業務に従事していた上告人を含めた従前の技術士らは、同法施行後は(同法附則三項によつて昭和三三年八月三一日まで期間は延長されているが。)同法所定の試験に合格しなければ、技術士の名称を使用できなくなり、これは右名称と一体不可分をなす技術の紹介、指導等の職業の自由を、公共の福祉に反しないにもかかわらず、公共の福祉という理由で、剥奪されたものであつて、右技術士法三九条ならびに同法附則三項は、憲法二二条職業の自由に違反するものであり、これに反する判断をなした原判決も右憲法の条項に違反するものであると主張するに帰するものである。

しかし、憲法二二条の保障する職業の自由は、絶対無制限のものではなくして、公共の福祉の要請があるかぎり、制限され得るものであること、昭和三二年法律第一三一号(宅地建物取引業法の一部を改正する法律)が、宅地建物取引業者に対し、業務運営の適正を期するため、宅地建物取引員試験に合格した取引主任者制度を設けて、業者に宅地建物取引業に関し必要な知識を有することを要求するとともに、営業保証金制度を設け、その信頼度を高めることとしたことは、公共の福祉を維持するための必要な規制措置として是認されるべきものであり、そして、かかる措置は既存の業者についても、また必要であるこというまでもないとする最高裁判所昭和三六年(オ)第四九六号同三七年一〇月二四日大法廷判決の趣旨に徴すれば原判決が右技術士法三九条および同法附則三項が、職業選択の自由を保障する憲法二二条一項に違反しない旨判示したことは、正当として是認し得る。所論は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するものであつて、すべて採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

上告理由書<省略>

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